【ランニング初心者の方は、まず何から始めればよいと思いますか?】
最初から頑張り過ぎないようにして下さい。
特に久しぶりに運動をする方は、最初は本当にゆっくり “走ってる感じかな?” くらいでよいので、ウォーキングの合間にランニングを取り入れてみるなど、焦らずゆっくり始めてみてください。
実は私も最初は1キロも走れなくて、ゆっくり少しずつ距離を延ばして走れるようになりました。
子どもの運動会前に練習で走った時は、翌日筋肉痛だけでなくなぜか熱まで出てしまい、せっかく買ったシューズもその後しばらく寝かせしまいました。
思うように走れなくてモチベーションが下がったり、けがをしたりしないよう、最初からがんばり過ぎず、ゆっくり始めることをおすすめします。
でも走るからにはちゃんとランニング用のシューズを用意してくださいね。
【始めたきっかけと、走る目的はなんですか?】
年齢を重ねるごとに体力に自信がなくなり、またヘルニアや神経痛になってしまったこともあり、自分の健康面が心配になったことがきっかけです。
何か始めようと、まずは手軽にできる腹筋をやってみたのですが、あまりに久しぶりだったので、5回やるのになんと30分もかかってしまいました(笑)。
衰えをさらに実感した私は、中学生の時に陸上部で3年間、わりとみっちりトレーニングした経験を活かし、体力づくりと健康維持のためにランニングを始めました。
継続するために、とにかく楽しみながら走ることを大事にし、とりあえず2週間続けてみたところ、身体が若干締まったようで、いつもより細めのジーンズが履けるようになりました。
せっかくなのでずっと履けるように、それからは体型を維持することと体力作りを目標に、広瀬川沿いのコースを四季の移ろいを楽しみながら、マイペースに走り続けました。
しばらくは一人で走っていたのですが、知人に誘われ大会にも出るようになり、1年後には10キロくらいはふつうに走れるようになっていました。
こうして走ることに慣れて、大会でも楽しく走れるようになってくると、次第にフルマラソンに挑戦したいと思う気持ちが芽生えてきたのです。
ちょうどその時、アシックスの「ROAD TO NY」という企画があり、これは公募で選ばれた一般市民ランナーが、5ヵ月間小出義雄監督の指導を受けニューヨークマラソンに参加し、目標タイムでゴールしましょうという企画で、挑戦してみようと思った私はこれに応募してみました。
書類審査の段階で300人くらいはいたかと思います。
面接などもあり、その後の審査で30人ほどに絞られ、最終的にニューヨークマラソンに参加できるのは3人だけなのですが、なんとその中の一人に選ばれたのです!!
しかも地方の人が選ばれたのはおそらく初めてということで、喜びもひとしおでした!
その後小出監督に作成していただいた練習メニューをこなし、ボルダ―で5日間の高地トレーニングも行い本番に備えました。
そして本番、2007年11月のニューヨークマラソンです。
これまでのトレーニングの成果をすべて出し切ろうと、一生懸命走りました。
特にトラブルもなく順調に走ることができ、初めてのフルマラソンだったのですが、3時間15分16秒のタイムで無事完走しました。
こういうかたちでフルマラソンに挑戦するとは思っていなかったですし、トレーニングのおかげでよいタイムを出すことができたので、この経験で一気に世界が変わりました。
今の目標は、フルマラソンでコンスタントに3時間半を切ること、そしてもっと先の目標としては、60歳でねんりんピックに出ることと、80歳でホノルルマラソンを完走することです。
始めた当初とだいぶ目標も取り組み方も変わり、たまにつらいときもありますが、そんなときはいつも初心に帰って、広瀬川沿いのコースを自然を楽しみながら走り、気持ちをリフレッシュしています。
年齢を重ねても健康を維持してランニングを楽しみたいと思います。
【必須&おすすめのストレッチやマッサージなどはありますか?】
聞きなれない方もいるかと思いますが、骨ストレッチを走る前に行っています。
これはあまり筋肉に頼らず、骨、骨格で走るという考えに基づいたストレッチ法で、知人にすすめられたので、本を買っていろいろ試しています。
大切なのは力を入れるのではなく抜くことで、骨を意識したシンプルなストレッチをすることで身体が楽になり、身のこなしも軽くなります。
おすすめのストレッチなので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
また、走るときに重要な股関節のストレッチも行います。
やり方は四つん這いになり脚を上げて回すというもので、これは宮城県出身の長距離選手、村山紘太さん直伝のストレッチです。
村山さんから股関節の動きの大切さを教えられ、私も意識して行うようになりました。
ケアに関しては長く走って脚が疲れた時、お風呂で温水と冷水を交互に脚にかけ疲れをとるくらいで、そんなに入念には行っていません。
【お気に入り&おすすめアイテムはありますか?】
アシックスのアンダーウェア「インナーマッスル」はお気に入りアイテムのひとつです。
私は苦しくなるとすぐ猫背になってしまうのですが、このウェアは矯正機能があるので、肩甲骨などを開き正しい姿勢をキープしてくれます。
姿勢が崩れてくると思うように走れなくなることがあるので、このウェアには助けられています。
「バイオフリーズ」というジェルもおすすめです。
このアイテムはパフォーマンスの向上だけでなくケア効果もあるので、走る前後に使用しています。
最近は朝起きられなかったり、身体が重かったりすることがあるので、走れる身体作りのために1ヵ月くらい前から水素水を飲んでいます。
乳酸が溜まるのを防ぐことで疲労軽減の効果があるそうで、少しずつですがその効果を感じ始めています。
そしてもうひとつお気に入りのアイテムはお守りです!
この「勝守」はすごく気に入っていて、フルマラソンの時は必ず持って走っています。
勝負ごとに効果があるようなので、知人のランナーサンにもすすめています…というか買わせています(笑)。
【走るときに気を付けていることはなんですか?】
私は朝走ることが多いので、冬の暗いときは外灯のある明るいところや、車道と歩道が分かれている走りやすいところを走るようにしています。
最近は春先になるとクマの目撃情報が多いですよね。
お腹を空かせて市街地まで下りてくるクマが増えているようなので、クマが出た場所の近くはなるべく避けて走るようにしています。
さすがにクマに遭遇したら逃げ切れないですからね。
【練習内容とおすすめのランニングスポット】
一週間に4日くらいの頻度で走っています。
平日は朝5時ころから走り始め、1回に7キロ~10キロ走ります。
土日はもっと長く走りたいので、家族のスケジュールに合わせて時間を決め、20キロ~30キロ走ります。
近所のコースを走ることが多いですが、レースが近いときは若林緑地でスピード練習をします。
スピード練習というとすごく速い感じがすると思うので、実際に見たらスピード練習には見えないかもしれませんが、本人的にはスピード練習をしています(笑)。
また私は神社が好きで、大崎八幡や東照宮・榴岡天満宮など、走って神社巡りをすることもあります。
お気に入りは坪沼八幡神社で、茂庭から大八山を抜ける往復30キロのアップダウンのあるコースは、実に走りごたえがあります。
特に娘が受験の時はいろんな神社を巡ってお詣りをしました。
よく走る近所のコースでは、野草園の近くの萩ケ丘あたりは景色がとてもきれいで、信号もないので楽しく走れるコースです…アップダウンはかなりきついですけど。
【けがや故障、過去の失敗談について】
どちらもお酒での失敗なんですが…
以前ひざが炎症を起こしたとき、気にせずお酒をけっこう飲んでしまったんです。
すると翌日悪化して歩けないくらい痛くなってしまって…
しかもちょうどレースの多い秋口のことで、最後の東京国際女子マラソンに向けてトレーニングに励んでいた時期でもありました。
なんとか調整し無事走ることはできたのですが、ひざの状態が気になってなかなか集中できなかったのを覚えています。
つくばマラソンでは、本番2週間前にお酒を飲んでけっこう酔っぱらってしまい、帰りに派手に転んでしまいました。
それから腰の辺りがずっと痛くて、充分な練習ができず本番は惨敗…
結局その後1ヵ月くらい痛みが取れなかったので、今思うとひびか何かが入っていたのかもしれないですね。
という感じでお酒での失敗が多いので最近は控えるようになり、飲み放題のお店に行っても後半はノンアルコールを頼んだりと、セーブできるようになりました(笑)。
【継続するために工夫していることはありますか?】
些細なことでも楽しみを見つけて取り組むようにしています。
例えば、私は朝走ることが多いので、冬は日の出の少し前のまだ暗い時間に走り始めると、だんだん日が昇ってきて月と太陽を両方見られることがあり、ちょっと得した気分になります。
また、雪などで路面状況が悪いときは、娘の通学路をコースにした路面チェックを兼ねたランニングをし、娘に状況を報告します。
ただこれは私が走る時間と娘が登校する時間が違うので、あまり参考にはならないみたいですね(笑)。
いつも走るコースでは、途中にある温度計に差し掛かる前に、 “今日は何度くらいかな?” と走りながら体感で気温を予測します。
温度計の表示とぴったり合っていると、これがなかなか気持ちのよいもので、逆に外れたときは、 “思ったより寒かったんだ” などと考えながらまた走ります…
って、ほんとに些細なことなんですけどね、楽しみを見つけて走っています。
今はサークルに所属していることも、継続する上で大きな要素になっています。
以前、寒いのが嫌で2ヵ月くらい冬眠して、ランニングを休んだことがあるのですが、その間に体重が増えてしまって、再開した時に減量から始めなくてはならず、とても無駄に感じました。
たんぽぽRCに入ってからは、冬でも練習会がありますし、仲間のランナーさんのお誘いもあり、それがきっかけとなって冬眠することはなくなりました(笑)。
【ランニング初心者の方へのアドバイスをお願いします】
人それぞれ走る目的や取り組み方は違うと思います。
速く走れるようになりたいという人だけでなく、体力維持や健康作りのために楽しく走りたいという方ももちろんいると思いますが、まずはみなさん無理して頑張り過ぎないよう気を付けてください。
必要がなければ無理に大会に出たりすることもないとは思いますが、走ることをさらに楽しむためにも、慣れてきたら次のステップとして、ぜひ何か新しいことに挑戦してほしいなと思います。
サークルに入って仲間と楽しく走るのもよいですし、誘われて参加した大会が思っていたより楽しくて、結果的にハマってしまった、なんていうことにもなるかもしれません。
特に大会に関しては、ジャンルも数も増え楽しみ方も様々です。
エイドやゴールで振る舞われるフードを楽しんだり、家族や仲間と一緒に走ったりと、ファンラン的な楽しく走れるイベントもたくさんあるので、興味のある大会を見つけたら参加してみるのもよいと思います。
何事も新しいことに挑戦しそれを経験すると、世界が広がり、視野や選択肢の幅も広くなるので、さらに走ることが楽しくなると思います。
試しに一度レースにエントリーしてみたらハマってしまって、気づいたらシリアスランナーになっていた、なんていう方もたくさんいますからね。
いろんなタイプのランナーさんがいると思いますが、自分のやり方で楽しみながら取り組むことが、継続する秘訣だと思います。
【印象に残っている思い出はありますか?】
2011年、東日本大震災の年のことですが、10月に大阪マラソンの第一回大会、翌11月に天草マラソンに参加しました。
2ヵ月続けて遠方の大会にエントリーするということで、正直家族からは反対の声もあったのですが、天草マラソンに関しては私の父のちょっと強引な(?)誘いがありエントリーしました。
私の父は天草出身で、当時なぜか地元にいる親戚たちが、私が天草マラソンに出て走れば面白いのに、という話で勝手に盛り上がっていたようで、それを聞いた父からある日「親戚みんなで応援するって言ってるし、天草に来るのを待っているみたいだから、天草マラソンに参加してみてはどうだ?」と言われました。
とは言っても遠いし旅費はかかるし、でもせっかくだから出てみたいという気持ちもあり迷っていたのですが、父も久しぶりに地元に帰りたいのかなと思ったので、家族に相談しエントリーすることに決めました。
大会当日は親戚がみんな応援にしに来てくれて、5年ぶりに地元に帰った父もとても楽しそうに観戦し私に声援を送ってくれました。
私もとても気持ち良く走ることができ、走っているほうも応援しているほうも楽しく参加することができた、思い出に残る一日となりました。
父が亡くなったのはその翌年のことです。
今思うと、父の誘いで大会へ参加したこと、そして久しぶりに父と天草に行き、父が生まれた土地に親戚一同集まることができたことは、決して決まっていたことではないかもしれないけど、何かに呼ばれてのことだったんだなと、ふと考えるときがあり、父と一緒に天草に行けて本当によかったなと思います。
今まで数々の大会に参加していますが、私のランナーライフにおいて、とても印象深く思い出に残る大会の一つとなりました。
【取材者から一言】
小田島さん、たくさんお話をお聞かせいただきありがとうございます。
時折さらっとすごいお話をされるので、いちいち驚いてしまいすみませんでした!!
でも小田島さんのその謙虚な姿勢を見ていて、コツコツがんばっているからこそなんだなと感じました。
些細な楽しみですが、私も近所を走るときはネコがよく出現するスポットを通ったりと、いろいろ見つけて走っています!
ちょっとしたことでも、走るときの気分って変わりますよね。
ねんりんピックとホノルルマラソン目指して、いつまでも元気に走り続けてください!